みたりよんだりはなしたり

写真、旅行、おいしいものをたべることが好き。日々のつれづれを書いていきます。

トーマス・ルフ展と世界報道写真展2016を見て

竹橋の東京国立近代美術館で開催されているトーマス・ルフ展と、恵比寿の東京都写真美術館で開催されている世界報道写真展2016を、それぞれ観てきた。

いずれも、現在東京で開催されている写真展では人気の展示だ。

 

トーマス・ルフ展を見て

ルフの作品を観るのは、恥ずかしながら今回が初めて。

写真表現とは何か、ということが徹底して追求され続けていることに驚いた。

普段私が写真展を観るときは、「どの作品がどういう理由でどのようによかった」ということを言葉にしようと考えながら観るのだが*1、それ以前に、「写真って何だと思う?」「何であなたは写真を選んだの?」と問いかけ続けられるような展示だった。

ちなみにこの展示、条件付きで、全作品写真撮影可能。また、同じく条件付きでSNSへの画像展開も可能。すごすぎる。

 

展示作品のあらゆるシリーズが実験的に思えたのだが、個人的に最も衝撃を受けたのは、画質が劣化したJPEGを引き延ばした「jpeg」というシリーズ。

劣化したJPEGも、劣化していると見難いな、と条件反射的に思うものの、実はそれはそれで何が写っているかは分かる。

さらに、その劣化したJPEGをスマホで撮影して、その画面で見てみると、全体のサイズが縮小されて見えるので相対的に劣化がわからなくなってしまう。

こうなると、JPEGって実は別に劣化してても関係ないよねって思ったりする。

 

「jpeg」はあくまで一部なのだが、このような感じで、ルフの数々の作品を見ていると、写真において大事だと思っていたこと*2をいろいろひっくり返される感覚が続いて、頭をかき回される感じがしてかなり興味深かった。

 

「トーマス・ルフ展」展示概要

会期:2016/8/30-2016/11/13(10:00-17:00、金曜は20:00まで/月曜休館)
場所:東京国立近代美術館
ホームページ:http://thomasruff.jp/
入場料:一般 1600円、大学生 1200円、高校生 800円、
    中学生以下および障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料
アクセス:
東京都千代田区北の丸公園3-1
東京メトロ東西線竹橋駅1b出口徒歩3分

※東京での会期終了後、2016/12/10-2017/3/12に金沢21世紀美術館に巡回予定とのこと。

thomasruff.jp

 

世界報道写真展2016を見て

世界報道写真展は、ほとんど毎年のように見に行っている。

毎年、1月から2月にかけて主に前年に撮影された写真を対象にした「世界報道写真コンテスト」が開かれており、その入賞作品の展示である。
コンテストは、ニュース、一般ニュース、スポーツ、現代社会の問題、日常生活、人々、自然、長期取材の8部門に渡る。

 

今年は、複数の部門に渡って、シリアの内戦や中東での紛争、そしてそれに起因する難民問題が取り上げられていた。

写真の中には幼い子どもたちが死傷していたり、難民となって野宿している様子などが写っていた。自分の娘や息子を投影し、何とも苦しい気持ちに。

こうした戦争の凄惨さは現実離れしているようで、でももしかしたら日本だって何かが変わっていったら他人事じゃなくなってしまうかもしれないという、紙一重のところにあるような怖さもうっすらと感じた。

 

次に印象深かったのは、長期取材の2点。米軍における性的暴力被害にあった女性軍人たちを追ったシリーズ、進行がんに冒された両親の姿を娘が撮り続けたシリーズだ。

米軍女性のシリーズは、その闇の深さが人物の表情によく表れており、釘付けになった。私は女性だから、その傷の深さは想像するに余りあるという感じで、モノクロの描写から伝わるその痛みに、ただ胸が痛んだ。

がんに冒された両親を娘が撮り続けたシリーズは、写真の、日常を残していくものという役割が最大限活かされていた。

回復に静かに歓喜し、二人で並んで抗がん剤の治療を受け、弱った体で娘の花嫁姿を見送る。闘いの甲斐なく夫は先立ち、一年の月日ののち、後を追うように妻も亡くなる。

日記のように綴られていく日々。切なく悲しいけれど、心に迫る作品だった。

 

もう一つ、印象的だったのは、北朝鮮を取り続けたシリーズ。特に、その中の一枚、夕暮れの平壌に目を奪われた。

1950年代の東欧が未だそのままそこにあるような街並み。
同じような形で、小さく四角い窓が無数に並ぶ建物の、群れ、群れ。夕暮れ時だというのに、街を歩く人の姿はあまりにも少ない。
そして、その建物の姿があまりに閉鎖的な見た目であることに驚いた。

薄青く夕暮れに沈んでいく街全体が、まるで牢獄であるかのような、底知れない冷たさを感じた。

尚、この作品を撮ったデイビッド・グッテンフェルダーは、AP通信所属のジャーナリストで、北朝鮮に公式に撮影を許されている、数少ない外国人カメラマンなのだそう。

 

「世界報道写真展2016」概要

会期:2016/9/3-2016/10/23
  (10:00〜18:00、木曜日は20:00まで, 金曜日は20:00まで/
   月曜休館月曜日が祝日の場合は月曜日開館し翌日休館)
場所:東京都写真美術館
ホームページ:http://www.asahi.com/event/wpph/
入場料:
一般 800円 (前売り 640円)、学生 600円 (前売り 480円)、
中高生・65歳以上 400円 (前売り 320円)
アクセス:
東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
JR山手線・東京メトロ日比谷線恵比寿駅東口より徒歩7分

www.asahi.com

 

ルフ展、報道写真展という対極の2つの展示

ルフ展と報道写真展を短期間に続けて観たが、この2つは対極にある印象を受けた。

ルフ展は写真という表現技法ができることの実験と探求。

報道写真展は、ただとにかく写っているもの、人、事象をそのまま伝え、そしてそのまま受け取るものだった(報道写真だから当たり前なのだが)。

私自身は、写真は記録というスタンスの方がわかりやすくて好きだなとは思う。
アートとしての写真の綺麗さとか面白さ、興味深さももちろんいいのだが、その一枚を見たときに伝わる空気というか、その空気とか感情を丸ごと閉じ込めた、というようなものが好きだ。報道写真とか紀行写真のような、記録のための、伝えるための、あとで見返すための写真が、とても好きだと思う。

*1:自分が他者の表現から感じたことを言語化することは、逆に自分が表現するときにもとても役立つと思う

*2:被写体に明確にピントがあっていること、高画質であること、写真は自身が撮影するべきだということ、など…