みたりよんだりはなしたり

写真、旅行、おいしいものをたべることが好き。日々のつれづれを書いていきます。

海を見に行った

ある平日。

朝目が覚めて、猛烈に海を見たいと思ったので、海を見に行くことにした。

 

 

娘を保育園に送り、その後抱っこ紐で息子を抱えで最寄駅へ向かう。

駅のパン屋でお気に入りの、でも久々にハードパンのサンドイッチを買いこむ。

仕事着の人たちが足早に行き交う駅で、少し場違いな赤ちゃん連れの私は、壁際に行ってスマートフォンで行けそうな海を探す。

最初イメージしていたのは神奈川の海だったけれど(ほら、ベタだけれど江ノ島とか七里ヶ浜とか)予想以上に遠く、息子を連れて行くのが不安になり、都内の海浜公園にすることにした。

そこは休日に車で行ったことがあるところだった。

電車を乗り継ぎ、バスに乗る。

バスに乗る直前、駅の設備で息子に授乳をしたりオムツ替えをしておいた。

 

その公園は港湾地区にあり、向かうバスはガラガラ。

若い女性4人グループ、海釣りをすると思しきタンクトップ姿の男性、クールビズ姿の男性数名。

バスが走り始める。

駅からほんの少しだけ続く住宅街を抜けた後は、強い日差しの下、人っ子一人いないだだっ広い道が続く。シムシティのような埋立地。スケールの感覚がよくわからなくなる大きな倉庫や建物や大型車。歩道の道端には猫じゃらしやらひまわりやら名前は知らないけれどよく見かける背の高い雑草やらがぼうぼう生え放題になっている。

クールビズ姿の男性は倉庫街の途中で降りていった。

バスはその中をぐにゃぐにゃと曲がりながら進み、終点にたどり着いた。

残りの乗客が降りる。

釣り人は足早に海辺へと去っていく。女性グループはバス停に止まり、スマホを見ながら話し込んでいる。

バス停のあたりはちょっと心細くなるくらい何もない。頭上には高架の道路。向こうに、東京湾にかかる大きな橋のアーチ。

とりあえず海辺の方に私も向かうことにした。

この先自販機や売店があるかもわからないので、とりあえずバス停にあった自販機でミネラルウォーターと缶のカフェラテを買っておくことにする。

カフェラテは何種類かあったけれど、「最高峰のフレッシュラテ」という踊り文句にひかれ、プレミアムラテとやらを買うことにした。

ガランと缶の音。ひんやりと冷たい小さな缶。

かんかん照りで日を避けるところがないまま駐車場が続く。陽炎が見えそうなくらいに気温が暑い。

相変わらず人はいない。

 

場所の選定を明らかに誤ったとそこでようやく気がついた。

 

そして後で知ったのだけれど、その日は記録的な猛暑日だったらしい。

 

駐車場のアスファルトには、干からびたミミズが何匹も張り付いている。

半ば意地になって歩き、海辺にたどり着いた。

 

視界が広がると、急に風が抜けたような気がした。

左側には高速道路から続く新しく大きな橋。

右側にははるか遠くに東京の街並み。

海辺の柵に沿って釣り糸を垂らす大人や小学生たちがいる。時折子供が走る以外はほとんど時が止まったように動かない。

 

売店の傍に東屋があったので、そこに座る。息子を抱っこ紐から外し、風に当てる。

 

先ほどバス停でバスの時間を確認したところ、30分後の次のバスがいってしまうと、その後は1時間バスがない。

日よけできるところがあれば休みながら写真でも撮りのんびりしようかとでも思っていたけれど、とてもそんな雰囲気でも気分でもなかった。

慌ててサンドイッチを開ける。

エビと卵のサンドイッチ、生ハムとドライトマトのサンドイッチ。

こんな東京のギリギリ端っこに来てしまうと、少しオシャレっぽいそれらのサンドイッチがなんだか間抜けな感じだ。

汗を流しながら咀嚼する。

固いパンの中、舌には塩味ばかりを感じる。

早々にサンドイッチを食べ終わり、早くもぬるくなり始めたカフェラテを流し込む。プレミアムラテというだけあって、確かにミルクが濃厚でおいしい気がする。

 

少し汗が引いた気がしてようやく一息つき、周りを見回す。

売店の人や釣り人が時折こちらを見ている。

 

そうか。

こんな真夏日、炎天下の中を歩いて東京の端っこに海を見に来る赤ちゃん連れ。

育児に疲れたお母さん以外の何者でもない。

実際そうだった。育児に疲れたというと言いすぎだけれど、毎日続く日常に明らかに倦んでいて、気分を変えたくて普段見られない海を見に来たのだった。

 

ようやくそんなことに気づいて、笑い出したくなる気持ちになる。

バスの時間が近づいていることに気づく。早く帰らないとね。息子を抱っこ紐に入れる。

 

海は広い。その向こうに小さく見える、自分たちが住む街が作り物のようだ。

数枚だけ海の写真を撮り、足早にバス停に戻った。

バス停には釣りをしてきたらしき男女が先に待っていた。この後かき氷でも食べようよ、と、キャップにサロペット姿の女性が言っている。

数分してから、バスがやってきた。相変わらずガラガラだ。

男女5人グループだけを下ろしたバスに入れ替わるように乗り込む。

夢のように涼しい車内。

冷たい水を飲み、一息ついて、車窓から炎天下の人っ子一人いない倉庫街が流れていくのを見る。

 

バスが住宅街に入り、駅が見えてくる。

日常が戻ってくる。

駅に戻ったら早く息子に授乳をしなければ。

たぶんもう来ないだろうなあ。でもまた来るかもしれない。

帰り道のことを考えながら、ぼんやりとそんなことを思った。

 

※ちなみに行ったのはこちらです

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